20年前の思い出を胸に、ハノイの夜へ
ハノイ旧市街の夜は、旅人の心を高揚させる独特の空気があります。建物は低層で、ネオンは温かく、どこかノスタルジックで、アジア旅行者の原点のような街並みが続きます。そんな夜の散策中に、私の足は自然と広場へ向かっていました。
──20年前、ホーチミンで食べた忘れられないバインセオの味を、もう一度確かめたい。
そんな思いが胸にあったからです。
青春のような記憶と、あのカリッと軽やかでジューシーな味への郷愁。旅には「記憶の再訪」という側面があります。今回のハノイ旅行では、その懐かしさに導かれるように、旧市街の中心で屋台のバインセオを見つけ、迷わず購入しました。
しかし、結果は期待とは程遠いものでした。味が薄く、香りも控えめで、20年前の感動の再現にはならなかったのです。
本記事では、思い出の味を追いかけて失敗したけれど、それでも旅は面白いという、リアルな体験談をお届けします。
ハノイ旧市街の夜:旅人を惹きつける混沌の美しさ
ハノイを訪れたのは数年ぶりでしたが、旧市街の”夜の顔”はやはり魅力的です。昼間はバイクと車が入り混じるカオスな交通が続きますが、日が沈むと一転して人の流れが主役になり、屋台やカフェが活気づきます。
旧市街は細い通りが入り組み、雑貨、衣類、飲み物、ストリートフードまで、あらゆる生活がそのまま路上に溢れています。観光客と地元の人が混ざり合い、歩くだけで旅情を感じられる雰囲気です。
この街は、よく「歩くほどに深みが出る」と言われます。看板の明かり、店先の香り、路上で食事をする人々…そのすべてが異国らしさに満ちていて、旅の高揚を呼び起こします。
実際、ハノイを歩きながら「こういうアジアらしい夜景が好きだ」と感じる人は多いはずです。私自身も、いつの間にか旧市街の夜が好きになり、歩くだけで満足できてしまうほどでした。
その心地良い流れのなかで、ある場所へ自然と足が向かいました。
それが今回の舞台──ドンキンギアトゥック広場(Dong Kinh Nghia Thuc Square)でした。
広場の夜の表情:観光客と地元の人が入り混じる活気
広場に近づくにつれ、照明が明るくなり、人の密度も高くなります。ここはハノイ旧市街の中心で、ランドマーク的な存在です。夜になるとストリートパフォーマー、ティーンエイジャーの集まり、観光客の撮影スポットとして機能し、バイクが人の間を縫うように走り抜けます。
広場周辺には数軒の軽食屋台が並び、どれも誘惑の匂いを放っています。
思い出の味を求めて、私はそのなかからバインセオを提供している屋台を探しました。
ほどなくして、炭火の煙と薄黄色の生地が目に入りました。
──あった。
20年前の記憶がふっと蘇り、期待が一気に膨らみました。
20年前、ホーチミンで出会った“人生最高のバインセオ”
私が初めてバインセオを食べたのは、まだ旅慣れていない頃に訪れたホーチミンでした。街の喧騒に飲まれながら入った小さな路地裏の店で、偶然注文したのがバインセオ。
その瞬間、これが運命の出会いになるとは想像もしませんでした。
・生地はカリッとして香ばしく、軽い食感
・中は豚肉とエビ、モヤシがたっぷり
・濃厚で甘みのあるタレ
・香草との相性が抜群
まさに「初めて食べた料理で人生が変わる」瞬間でした。
その味は長年忘れられず、旅をするたびに「またあの味に出会えるだろうか」と思い返してきました。
その記憶が、今回のハノイ旅で再び心を刺激し、広場の屋台での購入へとつながりました。
屋台のバインセオを購入:期待は最高潮に
屋台のおばちゃんが手際よく炭火で温め直します。
炭火の音と匂いに、期待はどんどん膨らみます。
受け取ったバインセオは紙で包まれ渡されました。
「ついに、20年前の味と再会できるかもしれない」
そんな思いで、近くの段差に腰を下ろし、いざ実食しました。
味が薄く、正直…期待外れでした
結論からいうと、正直なところ「あれ?」という感想でした。
一口かじった瞬間、違和感が走りました。
味が驚くほど薄い
生地は軽いものの、香ばしさは控えめ。
中の具材もほとんど味がせず旨みがほとんど感じられません。
タレも甘さも酸味も弱く、どこか輪郭のない味でした。
ホーチミンの南部味とは大きく違う
ホーチミンのバインセオは香ばしさと甘みが強いのが特徴ですが、今回のバインセオはそれとは対照的でした。
まるで、“必要な要素がすべて薄くなったバージョン”のような印象でした。
──期待が大きかったぶん、落差も大きく、少し切ない気持ちになりました。
なぜ美味しく感じなかったのか?地域差から分析
ベトナム料理は地域によって味付けが大きく異なります。
今回の体験を分析すると、以下の理由が浮かび上がります。
北部(ハノイ)は薄味文化
ハノイでは魚醤や砂糖を控えめに使うことが多く、料理全体が淡い味になります。
屋台の個体差も大きい
屋台は店によって味のブレが大きく、観光地周辺は無難な味に寄せているところもあります。
これらが組み合わさり、今回の「味が薄いバインセオ」が誕生してしまったのだろうと感じました。
失敗しない屋台グルメの選び方
今回の経験を通じて、屋台選びの重要性を再認識しました。以下は失敗しにくいコツです。
①地元の人が並んでいる屋台を選ぶ
これは絶対の指標です。地元客が多い屋台は味の保証があります。
観光客しかいない屋台は注意が必要です。
②具材の量と手際を見る
具材が多い屋台、調理が丁寧な屋台は比較的安心です。
③複数の屋台を見比べる
焦らず比較すると、当たりに出会いやすくなります。
せっかくなら食べてほしいハノイ夜グルメ
バインセオは残念でしたが、ハノイの夜グルメは魅力的です。
・フォー
・ブンチャー
・揚げ春巻き/蒸し春巻き
・ビアホイ
・ソーセージ
旧市街は食べ歩き天国なので、気になる料理があればぜひ挑戦してみてください。
思い出の味には勝てなかったけれど、それも旅
20年前のホーチミンで出会ったあの衝撃の味──その記憶を超えることはできませんでした。
しかし、旅とは「比較」であり、「発見」であり、「思い出を更新する行為」でもあります。
今回の失敗は、また次の旅のきっかけになるはずです。
思い出のバインセオには再会できませんでしたが、ハノイの夜はやっぱり魅力的でした。
そして次こそは、美味しいバインセオに出会えるよう、また旅を続けていきたいと思います。












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